ギター初心者の方に、「エフェクターは何がおすすめですか?」とよく聞かれます。
エフェクターの数はごまんとあるので「好きなギタリストは?」「どんな音にしたい?」「予算は?」など、ヒアリングすることが多くて困ることも(苦笑)
(中級者以上なら『Quad Cortex』がオススメです)
ただ1つ言えることは、ギター初心者に ”コンパクトエフェクターはNG”です。圧倒的にマルチエフェクターの方が良いです。それはなぜか?
エフェクターだけでも通算100万円以上投資してきた筆者が、その理由を解説していきたいと思います。
【理由①】熟練者は「スキル」で音を作れる
ギター初心者には、「高級エフェクターを使えば、プロのサウンドが手に入る」と考える方が多いですが、ギター熟練者はどんな機材でも ”自分の音” を出します。
あるセッションライブに参加したときのこと。スタジオミュージシャンで有名なプロギタリストA氏がフラッと店に訪れ、数曲セッションしてもらう流れに。
A氏は、直前に演奏していたアマチュアの方のギターと機材を借りて超絶プレイを披露。持ち主とは、まったく別モノのように鳴っていたことをハッキリと覚えています。
もちろん、良い音で演奏するには ”一定ランク” の楽器や機材は必要ですが、必ずしも「良い音=高級機材」ではなく、自身の腕も影響することは忘れないでください。
【理由②】コンパクトよりも「コスパ」が良い
一部のクラシカルなジャンルを除いて、近代音楽を演奏するなら ”最低限でも4種類のエフェクターが必要”になるでしょう。
- ワウ・ペダル
- 歪み系:オーバードライブ、ディストーション他
- 揺れ系:コーラス、フランジャー他
- 空間系:ディレイ、リバーブ他
コンパクトエフェクターの相場は大体1万5000円前後。 チューナーやエフェクターケースも合わせたら、最低限揃えるだけでも7万円以上の費用がかかります。
マルチエフェクターなら安価モデルで1万円前後、実用的なモデルなら3万円前後。コンパクトエフェクターの半分のコストで多彩な音色を扱えるようになります。
【理由③】サウンドに「個性」を出せる
マルチエフェクターには、ギタリストにとって必要なエフェクトがすべて揃っているので、あらゆるジャンルに対して個性のあるサウンドが作れます。
- フィルター系:イコライザー、ワウ、オートワウ他
- 歪み系:オーバードライブ、ディストーション、ファズ他
- 揺れ系:コーラス、フランジャー、フェイザー他
- 空間系:ディレイ、リバーブ他
- ピッチシフト系:オクターバー、ピッチシフター、ワーミー他
- その他:コンプレッサー、チューナー、ボリュームペダル他
音作りが苦手な方は、豊富なプリセットから選べば良いですし、Youtubeや音楽ブログで ”音作りのコツ” はたくさん紹介されています。
マルチエフェクターにはメモリー機能があり、オリジナルの設定をいくつも「保存」「呼び出し」「共有」することも可能です。
【理由④】練習に「全集中」できる
初心者のうちは、何よりも ”ギター練習に時間を使うべき” です。理由①でも説明しましたが、熟練ギタリストはどんな機材でも ”良い音” で演奏します。
どのエフェクターが良いか片っ端から調べたり、高級機材を買うためにバイトを増やす時間があれば、弾ける曲を増やしてギタースキルを身に付けましょう。
必要なエフェクトが一式揃ったマルチエフェクターは、練習環境や集中力の向上においてもメリットがあります。
【理由⑤】最小限に「トラブル」を回避できる
ギター初心者の方で、ライブやレコーディングを目指すなら ”機材トラブル” の対処は避けて通れません。本番当日に、想定外の事態はつきものです(涙)
ご想像のとおり、機材と配線が多くなるコンパクトエフェクターの方がトラブルが起きやすく、日頃のメンテナンスやコストもかかってきます。
マルチエフェクターなら、”バックアップ” があれば基本的にOK。万が一、「保存データ消えてしまった!」という場合も、すぐに元の状態へ戻すことができます。
マルチエフェクターの「デメリット」は?
マルチエフェクターのデメリットに、よく3つのことが取り上げられます。ただし、間違った見解も見受けられるので解説していきます。
①サイズが大きい?重い?
コンパクトエフェクターで必要な音色を揃えていくと、マルチエフェクターと同等かそれ以上の重さやスペースをとります。
プレイスタイルによりますが、2~3音色で充分であればコンパクトエフェクター、色んな音色を使うならマルチエフェクターが良いでしょう。
②ドライブサウンドが細い?
マルチエフェクターの歪みは、「デジタル臭い」「芯がないサウンド」「バンドで音が抜けない」「温かみがない」とよく言われます。でも、それは今や昔のこと。
近年のモデリング技術の発達は著しく、ギタープロセッサーと呼ばれる『KEMPER』『HERIX』『Quad Cortex』などは実機と遜色ないサウンドです。
マルチエフェクターも同様に進化し、高クオリティなサウンドを実現しています。さすがに、1万円前後の安価品になると昔ながらのデジタル臭さは残っていますが…。
③操作や設定が難しい?
マルチエフェクターは、”多彩な音作りが可能だが、操作が難しい” と言われます。そのイメージも今は昔で、近年のモデルは ”スマホ感覚” で操作できるモデルも登場しました。
デジタル系に自信がなく、ボタンや設定はなるべく少ない方が良いという場合は、コンパクトエフェクターのようにノブを回して音を作る ”アナログライクのモデル” もあります。
いずれも直感的に操作できるので、世代を問わず使いこなすことができるでしょう。
マルチエフェクターを「選ぶ」3つのポイント
マルチエフェクターを選ぶポイントは3つあります。各プレイスタイルによって変わってくるので、自身と照らし合わせながらチェックしていきましょう。
①ペダルスイッチの数
ペダルSWの数が 少ない | ペダルSWの数が 多い |
|
|
ライブやスタジオ・レコーディングを目標とするなら、複数のサウンドを ”瞬時に切り替えられる”ようにペダルスイッチの多いモデルを選びましょう。
練習や宅録など、音色切り替えが ”リアルタイムで発生しない場合” は、ペダルスイッチの少ないモデルを選びましょう。
いずれにせよ、1万円台のモデルは ”使える音が少ない” ので(言い方を変えると「安かろう悪かろう」)、はじめから避けたほうがよいでしょう…。
②エクスプレッション・ペダルの有無
ペダルを踏みながら上下に動かす「エクスプレッション・ペダル」は、さまざまなエフェクターに変身するギタリスト必須のアイテムです。
- ワウ・ペダル
- ボリューム・ペダル
- ワーミー・ペダル
- パラメーターコントローラー 他
※Drive、Tone、Depth、Speed、MIX量など
各種ペダルの説明は割愛しますが、ロック、ブルース、ファンク、HR/HM、ポップスなどあらゆるジャンルで使われる音色です。
各種ペダルを別途購入すると数万円かかるので、特別な理由がなければエクスプレッション・ペダル搭載モデルを選びましょう。
③サイズと重量
同じマルチエフェクターでも、各メーカーやモデルによってサイズ・重量が違います。ご自身の ”音楽活動” も想定して、総合的に選ぶのがポイントです。
例えば、次のように何を優先するべきか基準を決めておくと良いです。
主な活動 | 重視・優先する基準 |
ライブ | 例)耐久性、軽量を重視。膨大なエフェクト数は要らない。 |
宅録・DTM | 例)音質、エフェクト数を重視。持ち運ばないので重量は問わない。 |
注目のマルチエフェクター「5機種」の紹介
マルチエフェクターの選び方を説明してきましたが、国内外の楽器メーカーから数多く販売されているので欲しい機種を探すにも大変です。
そこで今回は、信頼・実績のある5機種を紹介していきます。どんな使い方に向いているかも解説しているので参考にしてください。
超定番コンパクトが大集合『ME-80/BOSS』
「ME-80」の主な特徴 | |||
アンプモデル | 9種 | ペダル数 | 8+1 |
エフェクト | 約60種 | 画面サイズ | 2桁LED |
サイズ | 447×231×70mm | 電池駆動 | 単3形×6 |
重量 | 3.6Kg | 価格相場 | 31,900円~ |
その他 | ループ機能、COSM搭載 |
- 銘機「OD-1」「DS-1」や、最新の「TERA ECHO」などを搭載
- TONE CENTRALからプロ音色のダウンロードが可能
- 各エフェクトのON/OFFを切り替えるマニュアルモード
- 1アクションで音色を切り替えるメモリーモード
- 36ユーザー+36プリセットのパッチ登録
- モジュレーションの2台同時、ディレイ3台同時使用が可能
- 最大38秒のPHRASE LOOP装備
- 約7時間の電池駆動(アルカリ電池)
「ライブをたくさん演りたい!」ならコレ♪
ME-80の ”高音質とシンプルな操作性” はプロアマ問わず人気です。筆者の友人・知人でも愛用者が多く、HR/HM系ギタリストにはかなり重宝されています。
人気の秘訣に、世界的に定番のコンパクトエフェクターが大集結したことが挙げられます。銘機と呼ばれる機種から、最新技術による機種までモデリングされています。
また、直感的に操作しやすいインターフェイスや、パッチ切り替え時の音切れがほとんどないので断トツにライブ向きです。
今回紹介するマルチエフェクターの中では重量がありますが、そのぶん耐久性があるので過酷なステージが続いても安心。Youtube動画でサウンドも確認してみてください。
アナログ回路で直感的な音作り『Red Truck/MOOER』
「Red Truck」の主な特徴 | |||
アンプモデル | ー | ペダル数 | 6 |
エフェクト | 約10種 | 画面サイズ | ? |
サイズ | 370×96×51mm | 電池駆動 | ー |
重量 | 1.2Kg | 価格相場 | 27,000円~ |
その他 | スピーカーシュミレーター内蔵、タップテンポ付 |
- チューナー、スピーカーシミュレーター内蔵
- 各エフェクトの個別コントロール可能
- エフェクトON/OFFのプリセット可能
- センド・リターンへの外部ペダル接続
- ミキサー、ヘッドフォン等へのステレオアウト
「面倒はイヤ!使いやすさが大事!」ならコレ♪
Red Truckは、アナログ+デジタル回路で設計されたハイブリッド型のマルチエフェクター。小型エフェクターを得意とする「MOOER」だからこそ成せる技です。
コンパクトエフェクターを並べたようなインターフェイスで視覚的に分かりやすく、必要なエフェクターも揃っているので、初心者でも即戦力となるデバイスです。
近年、アナログ系マルチエフェクターはトレンドにもなっています。こちらの記事で解説していますので、詳しく知りたい方は参考にしてください。
コスパ最強のモバイルマルチ『GT-1/BOSS』
「GT-1」の主な特徴 | |||
アンプモデル | 27種 | ペダル数 | 3+1 |
エフェクト | 108種 | 画面サイズ | 132×32ドット |
サイズ | 305×152×56mm | 電池駆動 | 単3形×4 |
重量 | 1.3Kg | 価格相場 | 20,350円~ |
その他 | ループ機能、COSM搭載 |
- GTシリーズのハイコストパフォーマンスモデル
- ケースや楽器を傷つけにくいエッジレス設計
- TONE CENTRALからプロ音色のダウンロードが可能
- 音楽ジャンル等からパッチ検索できるEASY SELECT
- 直感的に音色を調整できるEASY EDIT
- 外部コントロール、アサイン機能搭載
- 約7時間の電池駆動(アルカリ電池)
「宅録にチャレンジしたい!」ならコレ♪
GTシリーズで最もハイコストパフォーマンスとなるGT-1。軽くてコンパクトボディには、最新COSM技術による ”プロレベル” のサウンドがぎっしりと詰まっています。
さらに、BOSS公式の「TONE CENTRAL」から世界のトップギタリスト達が作成したパッチをダウンロードして使うことができます。(ME-80でも可能)
ペダルが少ないのでステージには向きませんが、宅録したいギター初心者にとってコスパ最強のデバイスです。電池駆動もするので、路上ライブにも活躍します。
スマホ感覚で極上サウンド『G6/ZOOM』
「G6」の主な特徴 | |||
アンプモデル | 22種 | ペダル数 | 5+1 |
エフェクト | 約140種 | 画面サイズ | 4.3インチ |
サイズ | 418×228×65mm | 電池駆動 | ー |
重量 | 1.94Kg | 価格相場 | 39,600円~ |
その他 | Cubase LE同梱、IRデータ70種搭載&追加可能 |
- 4.3インチのカラータッチスクリーン搭載
- 上位機種『G11』と同等の最新エフェクトプロセッシング技術
- 16種類の定番アンプモデル+6種類の新開発オリジナルアンプモデル
- 22種類のキャビネットモデル+70個のIRデータ
- 新開発のオリジナルエフェクト計5種を追加
- 70プリセット+50ユーザーを読み込むIRローダー機能
- 最大7エフェクト+1アンプモデルの同時使用が可能
「サウンドも操作性も大事!」ならコレ♪
G6の驚くべき点は、なんといってもカラータッチスクリーンと圧倒的な音色数を ”低価格で実現” したことです。(他社メーカーなら、倍近い値段になります)
スマホ感覚で操作できるほか、iOSアプリ『Handy Guitar Lab』を使えば iPhone/iPadからワイヤレスでコントロール(別売Bluetoothアダプタ使用)することも可能です。
4万円前後と少々高い気もするかもしれませんが、コンパクトエフェクター2~4台分の値段でハイスペックデバイスが手に入る考えたらかなりお買い得です。
最新技術をもって還ってきた『POD GO/LINE6』
「POD GO」の主な特徴 | |||
アンプモデル | 87 | ペダル数 | 8+1 |
エフェクト | 219 | 画面サイズ | 4.3インチ |
サイズ | 359×230×89mm | 電池駆動 | ー |
重量 | 2.35Kg | 価格相場 | 58,000円~ |
その他 | ワイヤレス搭載版あり、IR追加可能 |
- Helix/HXプロセッサーから継承した高品質なサウンド
- 4.3インチのカラーディスプレイ搭載
- サード・パーティ製IRの無限ロード
- 音切れなく音色の切り替えが可能なスナップショット
- 無償アプリ「POD Go Edit」の提供
- レコーディング、リアンプ対応
「プロを目指して本格仕様!」ならコレ♪
POD Goは、元祖アンプシミュレーターPODシリーズの最新モデル。絶大な人気を誇るHelix/HXから継承されたプロ仕様・高クオリティのサウンドはクラス最高レベル。
本体シャーシはスティール/ポリカーボネイトで作られ、驚くほど ”軽量+コンパクト+頑丈”。どこへでも持ち運びやすく、激しいステージングも心配無用です。
2021年3月には、本体にワイヤレスレシーバーを内蔵したモデルも発売。こちらは77,000円~と値を張るので、金銭的に余裕があれば検討してみてはいかがでしょうか。
さいごに
ギター初心者は、マルチエフェクターの方がメリットが大きいです。必要なエフェクトは1つのデバイスに集約し、練習や演奏に集中できる環境作りが大切です。
下表は、今回紹介した5機種の比較一覧となります。あなたにぴったりの ”相棒” どれか探してみましょう。
ME-80 | Red Truck | GT-1 | G6 | POD GO | |
アンプモデル | 9種 | ー | 27種 | 22種 | 87種 |
エフェクト | 約60種 | 約10種 | 108種 | 約140種 | 219種 |
サイズ(mm) | 359×230×89 | 370×96×51 | 305×152×56 | 418×228×65 | 359×230×89 |
重量 | 3.6Kg | 1.2Kg | 1.3Kg | 1.94Kg | 2.35Kg |
ペダル数 | 8+1 | 6 | 3+1 | 5+1 | 8+1 |
画面サイズ | 2桁LED | ? | 132×32ドット | 4.3インチ | 4.3インチ |
電池駆動 | 単3形×6 | ー | 単3形×4 | ー | ー |
価格相場 | 31,900円~ | 27,000円~ | 20,350円~ | 39,600円~ | 58,000円~ |
それでは、快適なギターライフを♪