新型コロナによる影響は大きく、ライブ・イベントの全面中止、全国各地のライブハウス閉店、ミュージシャンの困窮など、音楽業界もかつてないほどのダメージを受けました。
先が見えないからこそ「音楽業界は今後どうなるのか」「いま何をすべきなのか」と、未来を据えて準備をしておかなければなりません。
今回は、調査結果をもとにコロナ収束後の音楽業界について考えていきたいと思います。
コロナによる『音楽への支出』の変化
上グラフは、日本レコード協会が「この半年間に音楽関連の商品・サービスについてどの程度お金を使いましたか。」とアンケート調査した結果です。
2020年の音楽への支出総額は5,842円で、過去12年で最少額。前年比も約40%減と、音楽業界は大きなダメージを受けています。内訳を詳しく見てみましょう。
最大のネックは『外出』できるかどうか
- コンサート、ライブほか ▼76%
- カラオケ ▼59%
- 音楽関係のグッズ、出版物 ▼47%
- 音楽ビデオ ▼33%
- CD購入 ▼20%
コンサートやライブ、会場で購入できるグッズ、カラオケなど、外出を伴う支出が大きく減少。新型コロナによる影響は深刻で、2020年には全国の有名ライブハウスが次々と閉店しています。
2021年になると、万全の感染対策で開催した「阿蘇ロックフェスティバル2021」「RUSH BALL2021」など、感染者を出さない ”大型フェス” の成功事例がちらほらと出てきました。
しかし、新たな変異株の発覚、収まらない感染拡大の波、新型コロナの手がかりは少ないまま。人々に不安が残る間は、外出を必要とするイベント開催は困難をきわめます。
もとに戻るのは『2022年中期』か!?
キーワードを ”外出” とするならば、外食産業も大打撃を受けています。上グラフは、経済産業省による「飲食関連産業の動向(FBI 2021年上期)」の結果です。
2020年前期に大きく下がっているのは、1回目の緊急事態宣言によるもの。解除後、約6ヶ月で半分近くまで戻しますが、2回目の緊急事態宣言で最低値の約1/3ぐらいまで落ち込んでいます。
直近の動向から ”コロナ収束を前提” として仮定するなら、2022年初期に最低値の約2/3まで回復、 もとの活動状況に戻るのは2022年中期と予想されます。
利用する『配信サービス』に変化あり
- 定額制音楽配信(363円)▼45%
- Amazon Prime Music(249円)▼36%
- ダウンロード型音楽配信(198円)▼51%
- 有料配信型ライブ(718円)NEW!!
- 定額制動画配信サービス(328円)NEW!!
2020年より、「有料配信型ライブ」「定額制動画配信サービス」が新たに追加され、配信音楽サービスを上回る結果になっています。注目すべきは、この2つの共通点が ”映像” であること。
コロナ騒動の前にも「有料配信型ライブ」はありましたが、サザンオールスターズ、GLAY、ONE OK ROCKなどのモンスターバンドの実績によって ”無観客ライブ” が浸透しはじめています。
コロナ収束後も、音楽配信から動画配信へと移行する流れは止まらないでしょう。音楽市場に映像ジャンルは大きく影響してくるはずです。
使わなかった『お金の行き先』はどこか
上グラフは、日本レコード協会が「ライブ・イベントに利用しなくなったお金の使い道として当てはまるものをすべてお選びください。」とアンケート調査した結果です。
ライブやイベントに使っていたお金は、「①貯金:24.9%」「②食費:23.2%」「③生活費の補填:23.1%」など生活資金に回してることが分かります。
コロナ収束後、人は『会場』に向かう
上グラフは、日本レコード協会が「利用が減った音楽関連の商品・サービスを今後利用したいと思いますか。」とアンケート調査した結果です。
- 【1位】コンサート、ライブほか … 55.5%
- 【2位】カラオケ … 47.0%
- 【3位】CD購入 … 36.6%
- 【4位】音楽関係のグッズ、ファンクラブ会費 … 29.9%
明らかに、”外出” を伴う利用意向が上位を占めていることが分かります。「音楽関係のグッズ、ファンクラブ会費」が上位にくることも、ライブやイベントを心待ちにする様子が伺えます。
さらには、Adoの初ライブ(2022年4月4日)などSNSで活躍するアーティストのリアルライブが若い世代を中心に話題となり、日本のライブシーンは以前より盛り上がる兆しが垣間見えます。
コロナで『増えたこと』とは?
上グラフは、日本レコード協会が「新型コロナウイルス流行以降、新たに始めたこと、頻度・回数が増えたこと」をアンケート調査した結果です。
コロナによって利用が増えたことは「有料配信型ライブ」が10.5%と最も高く、音楽を聴取するためには「YouTube」を利用していた人が60.8%と最も高かった。
YouTubeが『基盤』となる時代
モバイル社会研究所の調査結果により、YouTubeは国内ナンバー1の認知率(96.9%)と利用率(65.8%)が判明し、ミュージシャンにとって最重要メディアとこちらの記事でも解説しました。
上グラフを見ても分かるように、全世代で利用されている音楽サービスはYouTubeのほかにありません。今まさに音楽市場において ”YouTubeを制する者は、音楽プロモーションを制する” 時代です。
さいごに
上グラフは、IFPIによる全世界における音楽市場の年間売上レポート(2021年発表)です。2020年時点で、世界規模の音楽市場は前年比216億ドル (約2兆3458億円)とプラス成長を遂げています。
世間では「音楽業界はオワコン」などと言われていますが、日本を含む世界各国が新型コロナによる影響を受けたにも関わらず、音楽市場は6年連続で売上を伸ばしています。
その時代や状況によってリスナーが必要とする音楽サービスは変化するので、アンテナを張りながら音楽活動を持続することが大切です。